洗うことを前提に作られていない布団。その布団を洗うために、試行錯誤が繰り返されました。
布団は打ち直しができる。そう思っている人は多いかもしれません。
ですが、実際には打ち直しが出来ない布団が50%を超えています。
「どんな布団を使っていますか」と聞くと
「え~と、掛けは羽毛布団で、敷布団は…」
などの答えが返ってくる場合がほとんどだと思います。
寝具業界の仕事に携わっていなければこれが普通かもしれません。
一昔前では、布団の中わたといえば「木綿」でした。
ですがこの常識もだんだん変化してきました。
昭和30年代後半に合成繊維が広く出回るようになり、布団の歴史も変わっていきました。木綿と合繊の混綿。羊毛を中わたに採用したり、羊毛と合繊の混綿。そして羽毛が登場しました。
当然、側生地も変化を遂げてきました。コットンや合繊混、レーヨンやシルク混もあります。染料も進化を遂げ、羊毛や羽毛が吹き出ない加工をした側生地の開発も進みました。
いろんな作り方をされた布団を、ひとくくりの方法で洗う事は難しいのです。
今まで開発された布団を洗う仕組みは、見た目の汚れをとるだけのもので、その過程で脱水する時に異様な色の廃水が出る程度でした。この廃水を見て、ふとんの中もきれいになったと錯覚する方もいます。
一つの実験データがあります。見た目の汚れだけをとって仕上がった布団とフレスコの初期の水洗脱水機で洗った布団を敷いて中わたの状態を比較した事があります。
前者の中わたの状態は汚れが黒墨状に綿模様となって残り、後者の中わたは、綿わた本来の色になっていたのです。
しかし、中わたの片寄りはひどく、これを克服しなければいけませんでした。
ある日、天理の工場へクッションが一体となった長いすのカバーが持ち込まれました。
いろいろ考えた末に、くるくると紐で縛って洗濯機に放り込んで丸洗いした所上手くいきました。これが「すし巻き」の発見です。
これ以来、布団を「すし巻き」の状態で洗濯機に投入する事で、布団の中わたの片寄りを防いでいます。現在のフレスコウォッシングシステムの原点ですが、その後も研究は続いています。洗濯機にぎっしり詰めて、布団の中まで洗剤が浸透するか、洗濯水の温度、洗濯機の回転数はどうするか?
洗剤はどうするか?ダウンプルーフ加工した側地を通過して中まで浸透しなければ…。リンス剤は…、水にどっぷり浸して果たして乾くのか。仕上げはどうする…。タンブラーを利用しても温度は、時間は、回転数は…。あまりにも問題点が多すぎました。
「ボタンひとつでピュッと洗い、乾燥し、仕上げるシステム」、職人不要のシステムを確立する。
これが完成すれば、世の中に広く浸透する仕組みになるはずです。
試行錯誤は続きました。
(次回に続く)